咽頭炎/上気道炎

咽頭に炎症をおこしたものを咽頭炎といいますが、急性咽頭炎は、ウイルスや細菌の感染でのどの痛みや発熱がみられます。新型コロナウイルス感染症は、多くの方がワクチンを受け、ご自身もかかったことで、咽頭痛と微熱とだるさという軽症の方が多くなった印象です。上気道炎で鼻症状もあれば、そこを直接見て、治療できる耳鼻咽喉科はかぜの専門家といえるかもしれません。
慢性咽頭炎は、のどの痛み、違和感があり、胃散逆流、神経症、性病でもおこります。長く続く場合は悪性腫瘍のこともあり、ご心配であれば、ご相談ください。

扁桃炎

扁桃とは、口蓋垂(のどちんこ)の左右にあるリンパ組織で、細菌などの侵入を防ぐ役割を果たしています。この部分が細菌やウイルスにより炎症を起こしている状態を扁桃炎といいます。のどの痛みや発熱、だるさなどの症状が現れますが、ものを飲み込めないほどの激しい痛み、高熱などが起こることもあります。
扁桃周囲まで炎症がおよんで、扁桃周囲炎扁桃周囲膿瘍となることがあります。膿がたまった膿瘍では、膿を抜いたり、切開することで症状が軽くなります。
原因の菌が溶連菌であれば、症状が落ち着いても、抗生剤を1週間から10日間内服することが一般的です。EBウイルスの感染では、高熱が続き、首のリンパ節の腫脹が強く、一時的に肝機能障害を伴うことがあります。
食事がとれない時には、点滴をしたり、入院が必要となることがあります。
年に4回以上扁桃炎が繰り返し起きる場合には、手術により扁桃の切除を行うこともあります。

上咽頭炎

上咽頭とは、鼻の奥の突き当たりで、のどからみると上の部分にあたるので、上咽頭または鼻咽腔といい、この部分に炎症が起こるのが上咽頭炎です。
一般のかぜ(ウイルスや細菌の感染)、乾燥、ストレスなど、さまざまな原因により発症します。最も多い原因は風邪によるウイルスへの感染です。鼻とのどの間の痛みや、のどの奥に鼻水がたれ込み感、痰、咳、頭痛、倦怠感などの症状が現れます。
上咽頭炎では、炎症の原因となっている病気を探り、対処する必要があるため、原因によりさまざまな治療を行います。
上咽頭へ直接行う有効な治療として、上咽頭擦療法(EAT)があります。(上咽頭擦療法(EAT・Bスポット療法)をご参照ください。)

上咽頭擦療法(EAT・Bスポット療法)

上咽頭擦療法(EAT)とは、Bスポット療法とも呼ばれ、上咽頭の粘膜に塩化亜鉛溶液やトランサミン溶液を含んだ綿棒を使用してこする治療法です。
上咽頭にはリンパ組織が集まっており、人間の免疫機能の要所であるといわれています。
そのため、上咽頭擦療法を行うことにより、上咽頭炎だけではなく下記のような症状にも効果がみられます。風邪症状、後鼻漏の症状の他、片頭痛、肩こり、めまいなどの症状にも効果がみられる方もあります。最近では、新型コロナウイルス感染症の後遺症や体調不良にこの治療がおこなわれています。
以下の注意点がありますが、緊張を取り除いておこなっています。
炎症が強い場合、薬によりヒリヒリとした痛みが現れることがあります。痛みが強いほうが、より効果が現れ症状が改善する傾向があります。治療後、血液が混ざったりすることがあります。まれに治療後に症状が悪化したりすることがありますが、上咽頭の炎症が強いことによる一時的なものですのでご安心ください。

上咽頭擦療法(EAT・Bスポット療法)に同文掲載

口内炎

口の中の粘膜におきる炎症です。多いのは、アフタ性口内炎で、数ミリの白い斑がみられます。歯ブラシで傷つけたり、噛んでおこります。ビタミン不足や体の疲労も影響します。ウイルス性口内炎は、ヘルペス、手足口病などのウイルスが原因となります。糖尿病やぜんそくの吸入薬後のうがいをしていないと、カンジダ性口内炎をおこします。なおりにくい口内炎の中には、ベーチェット病やシェーグレン症候群などの全身疾患の一部としてあらわれるものがあります。

咽頭異物

多くは魚の骨ですが、口を開けて見えない場合は、内視鏡でしっかり異物の有無と、のどの異常がないかを確認して、除去します。オエッとなりやすい方には、のどに軽く麻酔をしておおこないますので、ご安心ください。扁桃のくぼみに白い塊がついて異物感がして来院される方もおられます。これは洗浄や吸引で除去します。

嚥下障害

のみこみ(嚥下)がうまくいかない状態です。つかえ感やむせることの原因が咽頭がんや食道がんなどでないことを確認することが大切です。
比較的健康な高齢の方にも、嚥下機能の低下は生じます。食事は取れていても、食事の時間が長くなった、むせやすい、咳をするという症状は、要注意です。むせるのは、空気の通り道(気道)である喉頭、気管、気管支に飲食物や唾液が入り込んでいる状態です。この嚥下機能の低下を放置すると、嚥下性肺炎をおこすようになりますので、放置できません。

当院では、嚥下機能検査(内視鏡で、検査水ののみこみを調べる検査)を行っていますので、ご心配な方はおっしゃってください。軽度の方は頸の筋肉のリハビリが効果を示します。さらに嚥下造影検査や中枢性病変の検査のために、専門機関へご紹介し、重症な方には手術が誤嚥を防ぐために必要となることがあります。

逆流性食道炎

胃の内容物はふつう食道へ逆流しない仕組みになっています。しかし、胃酸が逆流することで、食道粘膜にただれをおこす場合と、食道のただれはなく、胸やけや呑酸、咳や声がれ、のどの不快感の症状がでる場合があります。後者では、のどのがんなどがないことを確認して、胃酸を抑える薬で治療します。声帯の後方に肉芽組織ができて、声のかれがみられていても、薬の内服で軽快してきます。

唾石症/唾液腺炎

唾石症は唾液腺または唾液腺から口の中へ唾液を排泄する管に石ができる病気です。顎の下の顎下腺の顎下腺に多くみられます。石のために唾液の分泌が障害されて、唾液腺が腫れて痛みます。特に食事中や食直後に症状がひどくなり、感染を起こして口の中に膿がでることもあります。石のある位置や大きさによって、治療が決まります。口の中から唾液の排泄管を切開する方法や管に内視鏡を入れて石を取り出す方法があります。唾液線の中に石があると唾液線ごと摘出することもあります。
唾石で唾液腺炎を起こす他には、ウイルスが原因で耳の下が腫れるのが流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)です。細菌の感染を起こして、中にはくり返す方もあります。シェーグレン症候群やIgG4関連唾液腺炎など感染ではなく、自己免疫による全身疾患でおこる場合もあります。

味覚障害

食べ物の味がわかりにくい、変な味がする、特定の味がわからないことを味覚障害といいます。多くの方で血中の亜鉛不足がみられ、その原因は、原因不明、薬剤、舌炎、かぜ、貧血などがあげられます。亜鉛欠乏に対しては、亜鉛を補給する食事や亜鉛剤の内服で治療をしていきます。

舌がん/口腔がん

舌がんは舌にできるがんで、口腔がんで最も多いものです。舌の縁にできることが多く、虫歯や義歯の刺激が影響します。はじめは、舌表面の発赤や白くなる変化がみられ、口内炎と思われていることがありますが、なおりにくい場合は早めの受診をお勧めします。小さいうちは、舌を部分的に切除しますが、大きくなると広く切除をし、頸部リンパ節の手術も必要となります。舌の欠損が広範囲となった時は、ご本人の筋肉で舌を再建します。
口腔がんは、口の中のがんのことですが、舌の他に、歯肉、口腔底、頬粘膜、唇などにでき、粘膜のただれや発赤や白くなる変化、しこりがみられます。

咽頭がん

咽頭は、鼻の奥の上咽頭、口の奥の中咽頭、喉頭の後ろに下咽頭に分けられます。
上咽頭がんは、中耳へぬける耳管を圧迫して耳閉感や滲出性中耳炎や鼻づまり、鼻出血ではじまり、進行すると脳神経の症状や頸部リンパ節腫脹を起こします。
中咽頭がんは扁桃、軟口蓋、のどの後壁に発生します。ヒトパピロマウイルス(HPV)の感染で発生するHPV関連タイプと、喫煙・飲酒により発生する非HPV関連タイプに二分されます。ヒトパピロマウイルスは子宮頸がんを起こすウイルスで、ワクチンで予防ができるようになりました。HPV関連タイプは、比較的若い方にみられ、のどの病変は小さく、転移した頸部リンパ節が大きいという特徴があります。
下咽頭がんは、のどの下部、食道の入り口付近にできるがんで、喫煙・飲酒との関連が強く、男性に多くみられます。女性では鉄欠乏性貧血の方でみられることがあります。のどの違和感や痛み、進行すると声がれ、息苦しさ、嚥下困難となります。近年では、内視鏡の進歩で、早期の下咽頭がんが早期にみつかるようになり、声を出す喉頭を切除せずに口の中からの手術もあります。しかし進行した場合は、手術後の機能への影響が大きいので、早期発見が重要です。ぜひ早めにご相談ください。

頸部リンパ節腫脹、頸部の腫れ物

頸部に腫れがみられる頸部腫脹の中でも代表的な疾患として、頸部リンパ節腫脹があります。これは、頸部のリンパ節が炎症や腫瘍により腫れている状態です。
炎症による腫れの場合、原因は急性扁桃炎や咽頭炎などの急性炎症や、リンパ節自体の炎症が原因となるリンパ節炎などが原因として挙げられます。
また、副鼻腔など頭頸部にできた悪性疾患(がん)からのリンパ節転移や、悪性リンパ腫が原因となることがありますので、頸の腫れが続くのであれば、ぜひ耳鼻咽喉科を受診してください。腫瘍が原因の場合は、さらなる検査・治療のため、高度医療機関をご紹介させていただきます。

喉頭と声

喉頭炎/声帯炎

声を出し、気管の入り口にあたる喉頭に、ウイルス、細菌、発声、喫煙など様々なことで炎症をおこしているのが喉頭炎です。
急性喉頭炎は、声がれ、咳、痛み、発熱がみられます。症状に応じて、声や全身の安静、薬物の投与、吸入などを行います。
喉頭は空気の通り道のため、腫れが強くなり、呼吸困難の症状が出て、救急の対応が必要な場合もあります。急性喉頭蓋炎(次の項)、急性声門下喉頭炎などです。

急性喉頭蓋炎

のどの痛み、発熱に加えて、息苦しい、物を飲み込みにくい、つばがたれるという症状が出てきたときは、急いで耳鼻咽喉科の診察を受けてください。飲み込みの時に、気管の入り口をふさいで、食べ物が食道に行くようにする、喉頭蓋という軟骨でできた蓋の粘膜が腫れて、むくんで息の通り道を狭くする状態になって、窒息の危険があるからです。喉頭蓋の腫れには抗菌剤やステロイドの投与をおこない、呼吸困難が強い時は、気道確保のため、気管に処置を行います。

声帯ポリープ/声帯結節

声がかれる、声が出しにくいというこが続くときは、声帯に何かできていることが考えられます。声の出し過ぎや炎症でおこります。声帯ポリープは片側の声帯にできる柔らかい腫瘤で、声帯結節は両側の声帯に表面の堅さのある小さな腫瘤です。声帯結節は職業との関係がみられ、教師、保育士、歌手で、女性の方に多くみられます。大声を出す小学生男子にもおこることがあります。
いずれもまずは、声の安静(咳払いの禁止、大声の制限、加湿をする)と音声治療(言語聴覚士の指導)をして、手術の必要性を検討します。

喉頭がん

喉頭がんは、男性に多くみられ、喫煙が影響します。声帯にできれば、早くから声がれの症状が出て、早期に見つかりやすく、声帯の表面の手術ですむこともありますので、1ヶ月以上声がみられれば、どうぞ耳鼻咽喉科を受診してください。声帯以外にできる喉頭がんは、声帯の上の部分にできるもので、声がれの症状がでにくく、進行した状態でみつかることがほとんどです。喉頭がんは、進行度に応じて、手術、放射線療法が検討されます。

声帯麻痺(反回神経麻痺)

声帯の運動が制限される状態、麻痺を、声帯を動かす神経である反回神経の名前を使って反回神経麻痺と呼ばれています。原因となる病気は、甲状腺がん、転移性頸部腫瘍(食道がんなど)、縦隔腫瘍、心臓大血管疾患などがあります。かぜやウイルスも原因となります。原因治療後に高度の声がれがあれば、声帯内注入や声帯内方移動術などが行われます。